蒸し暑い日が続く日本の6月には、
涼しい北海道の広大な自然に囲まれたいものですが、
都心のイベント会場で最先端のテクノロジーと人混みに揉まれざるを得ないことも、
データサイエンティスト諸君には、ままあるかと思います。
2017年6月28日〜6月30日に、東京ビッグサイトにて、
「AI・人工知能EXPO」が開催されておりました。
上記イベントは、
「ライセンシング・ジャパン」、「クリエイターEXPO」、「映像・CG制作展」、
「コンテンツ配信・管理ソリューション展」、「コンテンツマーケティングEXPO」、「先端コンテンツテクノロジー展」
「グラフィックデザインEXPO」との同時開催、
および、初日からのマスコミでの紹介、とあって、会場は非常に活況となっておりました。
もともと、本イベントに興味を持ったきっかけは、
SQUARE ENIXでAIリサーチャーをやっていらっしゃる、三宅陽一郎さんがセミナー登壇することを知ったことでした。
5月頃に公開された三宅陽一郎さんのインタビュー記事が大変面白く、
その流れで下記書籍も続けて読みました。
ゲームというジャンルでのAI活用、
現実世界のシミュレーション、としての仮想物理空間でのAI活用、
ひいては、知能というものを理解するアプローチ、
としての側面に、非常に興味を惹かれたのでした。
ということで、三宅さんのセミナー聴講、
およびAI・人工知能のトレンドリサーチという目的で本イベントに参加してまいりました。
さて、三宅さんのセミナー内容(および書籍の内容)を、かいつまんでご紹介させていただきますと、
近年、ゲームは、オープンワールド型の3Dゲームが主流になりつつあり、
これまでの2Dゲームにおける、ルールベースではキャラクターの制御に限界がきており、
AIによる自律型の制御が必要になってきているとのことです。
そして、現代のゲームAIは
キャラクター1人1人を司る”キャラクターAI”、
世界全体を管理し、キャラクターなどに指示を出す”メタAI”、
キャラクターAI、メタAIのために仮想的な物理空間を認識するための”ナビゲーションAI”
といった3つのAIがあるようです。
上記3つのAIが連携しながら、仮想的な物理空間を把握し、
キャラクターの動き・状態に応じながら、全体を制御している、ようです。
そして、各々のゲーム内のキャラクターは
ある程度の期間、それぞれが仮想物理空間の中で、試行錯誤しながら動き回ることで、
自ずと最適な行動ができるように学習していくようです。
ここまでくると、ゲーム、とはいうものの、
もはや、池上先生のやっていらっしゃる”ALIFE(人工生命)”に近いものを感じます。
※池上先生の人工生命に関する考えを理解する入門として、
下記書籍はおすすめです。
つまり、メタ的な構造さえ、整えることができたら、
AIにとってもっとも重要な”学習データ”は、自らが(仮想)物理空間の中で作り出していくことになります。
そのような前提を踏まえた上で、AI・人工知能EXPOのブースを見てみますと、
AIの学習のために必要なデータをいかに集めるか、という点での展示がいくつかありました。
たとえば、ドローンが自動的に(工場、店舗などの)環境を飛び回り、
AIで(出入りする人の数やタイミング、そのとき何を持っているかなど、の時系列推移を)学習・予測するための
データを(AIによるドローン自動制御で)自動収集する、というソリューションの展示。
自動運転のAIを効率的に学習させるために、
様々なシチュエーションの仮想環境をAIが自動的に生成して、その中で学習させるソリューションの展示。
※自動運転のためのパラメータ調整を効率的に学習するために必要な組み合わせの
街、道路、交通人などのシチュエーションを、AIが自動生成してくれる。
このようなAIのメタ構造を広告やマーケティングにおいて活用するとすれば、
実世界を精緻にシミュレーションする、”AIが暮らす箱庭(つまり1.2億人のAIがメディアに触れながら生活する仮想環境)”を作る、ということでして、
もしそれが実現できれば(ノーム値による統計的なシミュレーションというレベルを超えて、)
一人一人のAIのカスタマージャーニーを追うことを通して、
どのようなキャンペーンをするとどのような効果があるかを把握することができるようになるかもしれません。
実世界に投入する時には、すでに仮想世界で最適化されたものが投入されるということです。
こうなってくるとお決まりの展開は、
この”自分が知覚している世界はAIによるシミュレーションではなく実世界だと言い切ることが果たしてできるか”
というマトリックス的世界観です、
と言い始めるくらいには、今日もまた蒸し暑い日です。
涼しい北海道の広大な自然に囲まれたいものです。
(余談)
いくつかの展示で、脳波をAIで解析して、自動コンテンツ生成、というものがありました。
AIにとって学習データが重要とするならば、
画像・動画解析の結果を入力されたものと比較して、
脳波を入力したAIは異質な(新規性のある)出力をするものになるでしょう。