データ分析という職務は、得てして属人的なものになりがちだと思います。
それは、(マーケティング業界に限った話ではないですが)
データ分析の現場で要求される知識・スキルが日々拡大し続けているからだと思われます。
よって、教え方が体系だっていないことも多く、
どうしてもある程度は独習することが求められるため、個人差が出てくるのだと思います。
※もともとのスキルというより、各々のモチベーションと学習能力によって差が開く。

結果、特定の人たちが深夜まで黒ビンのドリンクを飲みながら、血走った目で
“オレ、今週はアンパンしか食べてないわー。やなせたかし先生の漫画に出してもらいたいわー”
とかリアクションも面倒くさくなるような全く面白くない事を言い合って爆笑するという
端から見ると唾棄したくなるテンションでSQLとRをぶん回す
という光景は、
どのような企業でも日常茶飯事かと思われます。

さて、そんなデータ分析作業が終わり、飲みにいったお店で獺祭を飲んで癒されることもあるでしょう。
今回は、もはや世界的なブランドであり、データを用いたPDCAによるイノベーションとしても有名な
“獺祭”から、特に”データ分析作業のマニュアル化”について考えていきたいと思います。

私は山口県岩国市(獺祭の蔵元である旭酒造がある)生まれで、
酒蔵に見学に行った事もあるのですが、
小学生のときに吹いたリコーダーの曲のレパートリーよりもあやふやな記憶のため、
ベースとしては2014年9月に出版されました下記書籍から備忘録がてら
いくつか引用していきたく思います。




獺祭が起こしたいくつかのイノベーションのひとつである”マニュアル化”ですが、
作業工程、条件などをデータ化するとともに、
最も重要な事は社内で共有し、誰でも活用できる状態であったということです。

これまで職人芸のように考えられていた酒造りの工程をマニュアル化したことについて、
下記のように述べられています。

“工程はシンプルなほうがいい。誰でも造れる方がいい。(中略)
「笑い話みたいに僕が社員に言うのは、『どんなに音痴なヤツでも同じ歌を三百六十五日毎日歌ってたら
ちょっとは上手になる』ってね」”
(P.116)

そうすることで反復可能性が高まり、
PDCAを回す人が多くなり、それによってPDCA回数が多くなり、改善速度が高まります。

“造った麹のデータを毎日分析し、麹の力が強すぎると思えば弱める。
次の仕込みはこうしようと考える。(中略)
「微調整していけるということも旭酒造の強みなのです。」”
(P.137)

そうするとどうなるか。
もともとつくったマニュアル自体が、組織の中でどんどん改善されていきます。

“「いろんなところで『獺祭ってマニュアルで酒を造ってるんでしょう』と言われるのは
違和感があるんです。私たちのマニュアルはどんどん変わっていっているから、
いつも完成品であって完成品じゃないんです。
マニュアルとはどんどん進化するものでなければいけないと思います。」”
(P.146)


マニュアル化や、事例共有、の重要性は、組織のお題目としては掲げられる事が多い割に、
なかなか成功しない要因の一つは、現場においては”負担”と考えられることが多いためです。

それはデータ分析が、マニュアル化が出来ない作業であり、
どうしてもマニュアル化する必要がある場合には、
“最先端事例”からの”簡易化”が必要(シンプル化というより最低限のベーシックプラン化)、と考えられているためです。
それにより”最先端の(データ分析)事例を創出した人が、
(自分のためというよりは、組織全体のために)
最先端事例から汎用化できる部分だけを抜き出して
簡易版として周りに広めるべく、マニュアル化作業に労力を割く”という考え方に陥ることがあります。
結果、マニュアル化作業を割り当てられた当人にとっては負担となり、
もっと自分の分析を深くする事に時間を使いたいと思うでしょう。

もちろん、組織全体のレベルが上がれば、その人にしか出来なかった仕事が、
周りでも(簡易版だとしても)出来るようになり、負担が分散できるというメリットがそもそもあるので、
そのように当人を説得するという方法もありますが、本質はむしろ別のところにあるように思います。

マニュアル化とは、簡易版にする作業ではなく、むしろ逆で、
“もっと自分の分析を深くする”ために、組織全体を使って、
フレームを定めて作業の反復回数を増やし、自分の元々の分析を微調整し続けるためにマニュアル化し、
そのマニュアル自体、進化・深化させていくことが重要なのです。
※個々が独自にデータ分析フレームを開発すると、
 それぞれの反復回数が限界であり、微調整もその人にしか理解しづらい独自手法となってしまう可能性がある。

逆に言うと、固定化してしまったマニュアルは意味が無く、
マニュアル化は、マニュアルの改善の仕方も含めて考える必要があるということだと思います。


とはいっても、最後は個々のクライアントのマーケティング課題に応じて、
どうしてもマニュアル化できないことは残り、
今日も遅くまで働いたのなら、深夜に獺祭を飲む事にしましょう。